就職活動

「人手不足の補填」で終わらせない。高卒採用で本当に働き続けてもらうための企業の本質的なマッチングとは

Akatsuki

近年の労働市場では、人手不足や生産年齢人口の減少を背景に、高卒人材への注目が急速に高まっています。企業説明会や見学ツアーなど、高校生を歓迎する華やかなイベントが各地で開催されるようになりました。

しかし、こうした動きが単なる「目先の人手不足を補うためのパフォーマンス」に留まっているうちは、若者の早期離職という根本的な課題は解決しません。厚生労働省が発表したデータによると、高卒就職者の3年以内離職率は例年35%から40%弱という高い水準で推移しています(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」)。

企業が一時的な「安くて若い労働力」として高校生を消費するのではなく、本当に長く働き続けてもらうためには、これまでの採用と育成のあり方を見直す必要があります。現行のシステムの歪みと、現場で生まれた本質的なマッチングの実例から、企業が今とるべき姿勢を考えます。

独自の雇用慣行と企業の採用スキル不足が招くミスマッチ

高卒就職の現場では、一定の期間内に1人1社しか応募できない「一人一社制」や、校内での成績や活動実績に応じた「推薦順位」によって就職先が割り振られる仕組みが一般的です。このシステムは早期に高い就職率を達成できる反面、生徒自身の主体的な選択を狭め、納得感のない「不本意就職」を生み出しやすいという側面を持っています。

さらに、受け入れ側である企業側の課題も無視できません。特に指定校求人を利用する地元の企業においては、明確な採用基準を定めていないケースが散見されます。

自社の業務に本当に必要な資質を見極めるノウハウがないため、面接時に「部活動のキャプテンだった」「生徒会で活躍していた」といった表面的な華やかさに目を奪われがちです。このようにして、業務内容との適性を無視した「背伸びした採用」を行ってしまうことが、入社後の「こんなはずではなかった」というリアリティショックと早期離職に直結しています。

記号に頼らない「本質的なマッチング」の具体例

若者を使い捨てにせず、その未来を共に築いている企業は、学校が作った推薦順位や記号的な優等生像に依存していません。ある進路指導の現場で実際に見られた、2つの幸福な成功事例を紹介します。

実例1:職種名ではなく「働く環境」を一致させたケース

自然に関わる仕事を希望し、農業や畜産業の求人を探していたものの、枠の少なさから内定に至らなかった生徒がいました。その生徒は最終的に、それまで誰も希望していなかった「山を切り開きながら建設する仕事」に就くことになります。

一見すると最初の希望とは異なる業種ですが、「自然の中で身体を動かして働く」という本質的な労働環境が合っていました。入社後、その生徒は生き生きと目を輝かせて仕事の魅力を語るようになり、その姿に動かされたかつてのクラスメイト数名が、他社からこの企業へと転職する連鎖が起きました。

実例2:組織風土との相性を最優先したケース

真面目にコツコツと就職活動を続けてきた生徒Aと、直前まで進路を決めずに急に就職を希望した生徒Bがいました。ある企業は、一般的な優等生像に近いAではなく、Bを採用するという決断をします。

採用担当者から学校側へは、次のような丁寧な連絡がありました。

「弊社の現場は荒くれ者が多く、大変タフな環境です。真面目なA君が入社すると、周囲の荒いコミュニケーションに馴染めず傷ついてしまう可能性が高いと判断しました。B君の物おじしない気質こそが、今の現場で活きると考えての選択です。決してA君の努力を否定するものではないとお伝えください」

企業に求められる「一人の人間と対峙する覚悟」

これら2つの実例に共通しているのは、企業側が若者を単なる「労働力のパーツ」として見ていない点です。

必要なアプローチ具体的な企業の行動
働く環境の言語化自社の仕事が「どのような環境で、どのような五感を使って行うものか」を正確に把握し、求職者の本質的な気質と照らし合わせる姿勢
組織風土の客観視自社の現場の泥臭さや過酷さを隠さず、そこを生き抜くために本当に必要な適性を見極める採用基準の確立

若者に本当に働き続けてもらうための採用とは、自社の都合に合わせて背伸びをさせることではありません。自社のリアルな環境を理解した上で、その子の個性がどこで輝くかを真摯に想像するプロセスです。

景気の波や社会構造の変化を言い訳にせず、一人の子供、一人の若者の人生と対峙する覚悟を持った企業が増えることこそが、これからの地域社会と労働市場に必要となります。

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